部下を褒めていますか? 誰を褒めていますか?

 ある大手企業で管理職研修をした時のこと。その会社はエンゲージメントサーベイを実施していた。研修テーマに間接的に関係があったので、その結果を見せてもらった。詳しい内容にはもちろん触れないし、覚えてない。でも、一つその中でのおもしろい設問があった。正確な表現は覚えていないが、この設問は上司(管理職)と部下(一般社員)で問いを変えていた。上司に対しては、「あなたは、部下を褒めていますか?」、部下に対しては、「あなたは、上司から褒められていますか?」というようなことを訊く質問になっていた。
 結果は(想像された方も多いかもしれないが)、上司は、「褒めている」という回答の比率が高く、部下は「ほめられていない」という比率が高かった。荒っぽい言い方をすれば、上司は褒めているつもりなのに、部下は褒められているという認識が低い。ということだろう。やっぱり、上司は褒めてるつもりでも、上手に褒められていないのなか?なんて思っていた。

 少したってから、ふとこんなことを思いついた。よく2:6:2の法則と言ったりする。どんな集団でも、自然と「上位2割(優秀・主体的な層)」「中位6割(平均的な層)」「下位2割(貢献度・意欲の低い層)」に分かれるらしい。その科学的根拠はさておいて、比較的多くの人の肌感覚からずれていないと感じているように思う。
 上司が褒めるのは、どの層かというと、圧倒的に上位2割の層になるのでは?と思う。先のアンケートの設問で、「褒めてますか?」と聞き、上司は「褒めてます」と回答が多かったと思うが、「誰を褒めてますか?」「まんべんなく褒めていますか?」とは、訊いていないと思う。つまり、上司が「褒めてます」と回答した対象者は、多くが上位2割層に対して褒めているが、下位2割、そして中位6割は、あまり褒められていないというのが、現場で起こっていることでは?という気がしてきた。

 ここでは、あまり詳しく書かないが、「褒める」ことの効果は、簡単に言うと部下のモチベーション向上につながるということだと思う。自己肯定感や効力感が高まる、要因的には脳内物質の分泌とか、様々あるだろうが、簡単に言ってしまえば、部下のモチベーションにプラスの効果をもたらすということになると思う。こういったことが、必要な人、上司の働きかけによって、モチベーション向上が望まれるのは、どの層かというと、多分先の2:6:2で言うと、下位の2、そして中位の6ではないかと思う。上位の2はすでにモチベーションや自己肯定感、効力感は高い人が多いのではないかと思う。

 しばらく前の話しだが、こんなことがあったのを思い出した。以前、ある家電量販店の研修をしていた。その時は店長研修だったが、店舗が当時で100以上あったので、数回に分けて開催した。そしてこの年の店長研修のプログラムに、毎回優秀(と言われる)店長が自分はこんな取り組みをしている、というのを他の店長に紹介するセッションを織り込んだ。ある回のある店長の話を今でも覚えている。彼は、こんな話をしていた。(正確な記憶ではないが)
 「私がいつも意識しているのは、部下を褒めることです」(私は、そうだよな!と聞いていた)そして彼はつづけた。「いつも意識しているのですが、どうしても褒めにくい、褒めるところが見つからない部下もいます。」私は、彼に訊いた。「そういった部下もいますよね。そんなときは、どうするのですか?」彼は答えた。「そういった部下の時は、ものすごく観察します。いいところ、褒めるところはないか?と。例えばですが、毎日彼の担当売り場の売上を観察していきます。そうすると、ある日の午前中、担当売り場の成績がすごくいい時があったりします。残念ながら、週単位とか月単位にならしてしまうと、褒めるところが見つけにくいのですが(笑)。その日のお昼に、すぐ彼に声を掛けます。『今日の午前中、すごかったな!何がよかったんだ?へ~そうか。そういったお客さんが・・・。その調子で、引き続き、頑張れよ!』という感じです。」ということだった。
 その部下からすると、店長はそんな細かいところまで見てくれているのか!となるらしい。普段光の当たらないところに光を当てて褒めてもらう。そのことが部下のモチベーションにつながるのだと思う。

 部下は、自分のことを理解してくれる。自分を育てようとしてくれる。自分を理解してくれる上司についていきたい。この人のために!と思う。のではないだろうか?
 そして、更に、この下位の2割層を褒める、ということは、その集団全体に与える影響も多いと思うが、その話はまた別の機会に・・・

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