女神が降りてくる(情報と情報がぶつかることで創造が生まれる)

 以前、あるお客様の研修会で、受講生がこんなことをつぶやいていた。「みんなで話し合っていると色々なアイデアが出てくるけど、一人で考えていると、あんまりアイデアが出てこない・・・」
 問題解決に関する研修会でのことだった。「やはり」と思った。
 企業(個人も)は、現状の局面を打開しようと様々な取り組みをしている。しかし、多くの企業(個人)は、現状の延長線上にあるアイデアしか出てこない。
 創造性がない。創造性を身に着けたい。そう思う。しかし、そんなに簡単ではない。どうすればいいのか?革新的なアイデアを生み出すにはどうしたらよいのか?これは、昔から変わらず企業にとって重要なテーマであると思う
 人は、いい意味で経験を通して学習していく。これはすごく大事なことだと思う。経験からの学習があるから、我々は様々な物事に対して瞬時に判断し、対応(行動)できる。これがなかったら、我々の行動は、赤ん坊のように日々新たなトライ&エラーを繰り返すことになってしまう。しかし、これは、時に人の思考や行動をパターン化させてしまう。創造性とは、その認知の枠組み、思考の枠組み、行動の枠組みにとらわれないで発想することだと思う。ちがう言い方をすれば、その枠組みを外すことだと思う。
 
 昔、ある会社の研究開発(R&D)部門の人からこんな話を聞いた。「何かを生み出そうと本当に四苦八苦していると、時々ひらめくことがあるんです。思いもよらなかったアイデアが出てくるんです。まるで、R&Dの女神が降りてきて、よくこれだけ頑張りましたね、そのご褒美にこれを・・・とくれる感覚です。私は、そう思っています」その人の表情、話し方から、この人は本当にそう思っているんだなと感じた。
 何かの研究をしたり考えたりする場合、時々普段の自分だったら考えなかったことや思いつかないことを思いつく。頭の中で、思考パターンを何度も組み替えたりしながら、もう限界だと叫びたくなるくらい考えた時、ふとトイレで、または風呂場で思いがけないところでひらめく。なかなか説明がつかないが、時々聞くことがあるこういったケース。それを彼は、「女神が降りてくる」と表現した。

 日常生活や仕事の中で、我々がひらめく瞬間はもう一つあると思う。それは、外からの情報の刺激によるひらめきだ。テレビを見て、本を読んで、セミナーに参加して、何気ない人との会話から、「あっそうか!」「これだ!」と思うことがある。私の経験では、一人で熟考してひらめくよりも、こちらの方が多いと思う。特に「人」から刺激を受けることが多い。自分と異なる経験をし、異なる価値観を持っている人と対話することから、新たな発想が生まれることが多いのではないだろうか。
 ということは、自分の思考の枠組みに囚われずに、新しい発想でアイデアを生み出そうと思えば、様々な人たちと接触し、対話することが大事だということになる。創造的な人は、様々な人的ネットワークを持っている人が多いのではないだろうか。そして、創造的な人は、なんでも興味を持つ。興味・関心の幅や領域が広い人が多いと思う。だから、いろんなところに首を突っ込み、顔を出す。そして、いろんな人たちと接触する。

 今後、現状の延長線上で、10年、20年、30年とやっていける見通しのたっている企業は、ほとんどないに等しいと思う。我々は、好むと好まざるとに関わらず、新しい何かを創造することを求められている。創造性そのものの手法を学習することも大事だ(思考法として)。それに加えて、創造性を刺激するのは、異なる情報との接触であり、その情報のリソースとして最大のものは、他者だと思う。
 一方で、人はどうしても、今まで自分が培ってきたものを手放したり、異なる意見を受容したり、見知らぬ領域に足を踏み出すことをしたがらない傾向にあると思う。私たちは、往々にして自分と異なる考え方を持っている人のことは、遠ざけたり馬鹿にしたりしがちだ。しかし、異なる考え方や異なる情報とぶつかった方がアイデアは生まれる、、、
 言い方を変えると、、、女神は我々の周りにたくさんいる。後は、その人を女神だと思って接するかどうか・・・。でも実際は、なかなか女神として見れないことが多い気がする(自分も含め)。でも、女神を粗末に扱えば、当然女神はヒントをくれるはずもない。

 更に、組織・職場レベルで言うと、たとえ他者と異なる見解だったとしても、自由闊達に自分のアイデアを出し合える職場というのは、相互に信頼しあう関係があり、相互に尊重しあう関係ができている職場だと思う。周囲の視線や周囲の評価が気になったり、ましてや自分が周りから虐げられていると思えば、自らを守ろうとし、ガードを固くする。周りの人に対する感謝があれば、自分の持っている様々なものを周囲に与えようとする。女神が天から降りてくる職場・お互いが女神になっている職場とは、そういった職場だと思う。

 自分自身もそういった発想をもって、様々な人たちとの関りを持ち続けられればと願う。

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