私は、今でこそ営業強化の仕事をよくやらせてもらっているが、元々は営業には向いていないし、好きではなかった。
学生時代を通して、そもそも社交的、外交的ではなかった。そして、高校を卒業し、大学に入る前の春休みの2週間位、セールスのアルバイトをした時、自分ではっきり自覚した。そのバイトは、地図を渡され担当の地域の各家庭に訪問し、商品のアピールをし、契約をとるものだった。(怪しいい商品ではない 笑)細かい話しは省くが、結果として、ほとんど契約が取れなかった。一緒にやっていた友人の方がまだ成績が良かったので、どうやってるか聞いてみた。彼の回答は、「お願いだよ!『奥さん、学生のバイトなんです。なかなか大変で、、、なんとかお願いします!』みたいに」ということだった。それを聞いて、思った、、、、、自分はこのセールスという仕事は向いてないし、できないな、と。
しかし、大学を卒業し、就職の段になると、文科系の職種は営業が多かった。その中で、私は、コンサルタント会社(人材教育会社)の営業職として、働くことになった。
苦手で、自分には向いていないと思っていた営業職、でもこれからやらなければならない。入社前のある日、本屋で手にした本に、こんなフレーズが書いてあった。「人生はすべて営業」「いくらいいアイデアを持っていても人に伝えることができなければ、そのアイデアが日の目を見ることはない。社会の中で生きていく上では、人との関係の中では、会社であろうが男女間であろうが、すべて同じ。営業が必要」といったようなことが書いてあった。(残念ながら、なんという本だったか覚えていないので、言葉もうろ覚えだが。でも、その言葉に出会って、苦手かもしれないけど、やってみようか、確かに人生営業だよな、と少し前向きに考えることができるようになったことを覚えている。
先日、森岡毅さん(株式会社刀 代表取締役でUSJ立て直しに貢献)の本を読んだ。「マーケティングとは『組織革命』である。 個人も会社も劇的に成長する森岡メソッド」
結構面白かった。個人的に、ちょっと考え方が私とは違うなと思う部分もあったが、、(失礼)
特に面白かったのは、「社内マーケティング」の部分だ。社内マーケティングはポジションパワーが使えない人に対して使う、、、つまり顧客に対してと同じ、だから社内マーケティングなのだ。詳細は省くが、私が感じた森岡さんが前提として特に大事だと強調していたのは、顧客視点に立つことだと思う。顧客・・・更に人はどういうものか、どう感じ、どう行動するかに深い考察を持つ。顧客の目的・目指すところはどこかを考える。顧客と自分の間に共感を発生させる。同じ方向を向いているという実感を持つようにするということが重要とメッセージがされていると感じた。
お願いセールスをしても、相手は(よっぽど慈悲心がないと)受け入れてくれない。「相手にとって」という視点が不可欠だと思う。本の中にこんなことが書いてある「提案とは自分が属する組織を良くするために行うのであって、自分のメリットを提案するのはそもそも間違っているのです。困っている人が自分目線でお願いに行くのは、提案ではありません。「陳情」と言います。提案とは相手にメリットのある話を持っていくことであり、陳情とはこちらのメリットを相手にお願いすることです」
私は、営業が苦手だと思って、その中でもどうれば営業で成果をあげることができるかを苦労しながら考えてきた。その中で形作られていった私の考え方も同じだ。相手の視点に立ち、相手のためになることを提案しなければ、営業で成功することは難しいと思う。
まったく違う感じの人だが、通じることを言っている人がいる。ホンダの創業者の本田宗一郎さんだ。
「人を動かすことのできる人は、他人の気持ちになることができる人である。相手が少人数でも、あるいは多くの人々であっても、その人たちの気持ちになりうる人でなければならない。そのかわり、他人の気持ちになれる人というのは自分が悩む。自分が悩まない人は、他人を動かすことができない。私はそう思っている。自分が悩んだことのない人は、まず、人を動かすことはできない。」
「仕事でも遊びでも家庭生活でもそうだが、私たちの毎日はすべて他人との相互関係で成り立っている。ものごとをうまくスムーズに進めるためには、その相互関係が、ぎくしゃくしていてはいけないのである。夫婦の関係でも親子の関係でも、それは同様である。こちらが望んでいること、こうやりたいと欲していることをスムーズに受け入れてもらうためには、まず、先方の心を知らねばならない。相手の気持ちを知って、相手が理解しやすいようにもっていかなければ、心からの協力は求められないからである。そのためには、相手の立場に自分を置き換えたものの見方、考え方をすることが大切だろう。」
「私にとっての哲学は、何といったらいいか、人の心の問題を大切にする、ということに尽きるようだ。現代は特にそうなりつつあるが、何事も事務的に、機械的に処理される風潮がつよくなった。そういう中にあって、心と心を通わせる手立てがますます貴重になる。人の心を知るための哲学が必要とされてくるものである。経営者もそうであるが、すべての人が、哲学者でなくても、哲学を使う人になってもらいたい。心と心を通わせる手立て、というのはべつに何かの手段とか方法とかいうのではない。相手の心理状態に応じて、親切に呼びかける、ひとことの言葉、親切な態度でいいのである。これが簡単なようで難しい。人の心がわからないからである。」(「私の手が語る」より)
社内であれ、社外であれ、よりよいものにしていくためには、相手の視点にたった提案が大事になるのだと思う。森岡さんのようなマーケティングの視点からはもちろん、技術者であり経営者である本田宗一郎さんの目から見てもそうなのだと思う。
そして、図らずも、本田宗一郎さんが言っている。「それは難しい」と。当たり前のことのようで、実際は非常に難しい。ただ、必要なことだし、ゴールは見えなくても、取り組む価値があることなのは間違いない。
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