若い人は良く知らないと思うし、私も直接そのタイミングで知っているわけではないけど、土光敏夫(元石川島播磨重工業→東芝→経団連の長を歴任)の話しを読んだり、聞いたりしていると、まさに組織開発(Organization Development)という感じがする。
組織開発とは、様々な定義はあるが、組織の中の人や集団の関係性に着目し、その組織が自ら進んでよい方向に向かっていけるようにしていくことだと思う。
土光さん(と呼んでいいのか?)は、「ミスター合理化」「荒法師」「怒号敏夫」「行革の鬼」「メザシの土光さん」などの異名を持つ。そういった意味では、逸話に事欠かない。
また、多くの人から尊敬されていた。「偉大な井深大、本田宗一郎などの大物をはじめ、政治家の田中角栄や中曽根元首相までが、土光敏夫を尊敬、または極めて高く評価したことは事実だ。」「昭和天皇やエリザベス女王も、土光氏に会う機会を求めたことも事実であった。(最終的に土光氏の葬儀には、経団連、政府関係者、東芝、石播の関係者が大勢集まり、巨大な人の輪となった。これは、戦後最大の民間の葬儀とも伝えられている。)」Wikipediaより
そんな土光さんは、もちろん様々な観点から、多くの話しや言葉を残している。ただ、私は仕事柄か、土光さんの発言と「組織開発(Organization Development)」の思想観の共通点に反応してしまう。
「組織をいかに変更するかよりも、組織をいかに活動させるかを考えよ。そのカギは人の中にある」
「『真に生きた組織とは、相互信頼が形成された組織である』組織間に葛藤はつきものである。だが組織間の葛藤は必ずしも悪ではない。要はその葛藤が、前向きに処理されるか、後ろ向きに処理されるかにかかっている。前向きに処理される葛藤は却って組織に活力を与える。」
「会社全体が『システム』という概念を体得せよ」
・ 何ができるかでなく、何をなすべきか
・ インプットからアウトプットを導き出すのでなく、アウトプットを先に決め、それに合うインプットを選ぶ
・ 不確定要素を攪乱因子と見ず、成長因子と見る
・ 同一系列のタテの連結よりも、伊系列のヨコの連動を重視する
・ 組織を職能の分割と見ず、機能のネットワークと見る
・ 管理者たるもの、なによりも統合の精神を身につけねばならない
土光敏夫「経営の行動指針」より
これはらは、ほんの一部だが、今でも十分通用する内容だと思う。土光さんは、元々は技術者だったらしい。でも、「組織」というものが「人」の集まりであり、人の営みが大きく影響するということは、昔も今も変わらない。そういった中で、組織として何かを成し遂げようとすれば、もっと言えば社会が更によい方向に向かうようにしようと考え、たどり着いた必然的な考え方なのかもしれない。土光さんは、どの組織でも一人も解雇しなかったと言う。
組織開発の考え方が日本に持ち込まれたのは、1960~1970年代かと思う。土光さんは勉強家だったようだが、そういった考え方に触れていたかどうか、わからないし、それが特に大事とも思わない。
大事なのは、組織をよくするためには、人に着目し、異なる価値観をもつ人や部門同士がどうやって協働関係になるか、それを真剣に考え、実践することだと思う。土光さんの言葉は、自らの経験やそれを踏まえて考え抜いた中から絞り出した言葉なんだと思う。たまたま、その考え方と組織開発の考え方が近かった(または、組織開発の学者は、実践・実験的な中から理論を導いた)のだと思う。
これから我々が意識すべきなのは、知っているだけではなく、我々が本当にそれを大事だと信じ、本気で取り組めるかだと思う。
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